石垣の崩壊が懸念
2016年熊本地震では、熊本城で石垣が崩壊するなどの甚大な被害が発生しました。彦根城の倒壊だけでなく、石垣の崩壊を防ぎ、人命を地震から守るためには、石垣の安全性評価も重要となります。しかし、文化財であるため、天守台をはじめとして石垣内部の構造に関する情報は十分でありません。そこで、林研究室では、振動計測によって、天守そのものの耐震安全性を調べるだけでなく、天守台および石垣の内部構造の推定を試みています。
建物の揺れ方を調べる
まず、天守の耐震安全性を調べます。そのためには、まず、建物の揺れ方を調べる必要があります。通常は、高感度な振動計を建物の内部に設置して、人が感じられないほどの小さな揺れを計測する計測(微動計測)を行います。この計測では、振動計を設置した場所の揺れ方が分かります。今回は、振動可視化レーダを用いました。遠隔から建物表面の揺れを画像化し、面的に変位を同時計測することができます。この技術を用いることで、より複雑な揺れ方や変形性状を理解することができるのではないかと期待しています。
彦根城が建てられる前の元の山の形状を調べる
次に、天守台および石垣の内部構造の推定方法を紹介します。彦根城の本丸や西の丸に建てられた建物(天守・多門櫓・附櫓など)や石垣は、自然の地形をうまく利用して造られていると考えられます。したがって、建物が建つ地盤、石垣や天守台の安全性を調べるには、まず、建設される前の山(地山)の形状を可能な限り知る必要があります。林研究室では、表面波探査や微動計測といった振動計測技術を駆使して、地山形状の推定に取り組んでいます。