ついに開催!! 「増田友也展」と田路研究室の活動

1.2017年から続くアーカイビングを集積した展覧会

増田友也(ますだ・ともや、1914-1981)は、京大で増田研究室を主宰し、設計活動を行っていた建築家である。京都大学研究資源アーカイブの研究資源化プロジェクトにより、2017年から増田友也の設計活動による図面や模型写真、手記や日記に至るまで、様々な資料の適切な保存と公開が行われている。この度、10月27日(水)より京都大学総合博物館でこれまでのアーカイビングの成果を詰め込んだ、企画展が行われる。その準備と展示の様子をレポートする。

京都大学総合博物館2021年度企画展「増田友也の建築世界 -アーカイブズにみる思索の軌跡」

京大総合博物館企画展『増田友也の建築世界-アーカイブズにみる思索の軌跡』の広報ポスター

2.増田研の潮流を受け継ぐ田路研究室

京都大学増田研究室(通称・増研)は、増田友也の退官後、加藤邦男先生が後任を務め、前田忠直先生の研究室を経て、現在の田路研究室へと継承された。増田研究室の建築設計関係資料の多くは前田忠直先生によって保管されてきたが、田路研究室は田路研究室・博士課程在籍中の門間光によって図面の整理・リスト化が行われた。田路研究室でも、現在にいたるまで研究室活動の中で増田友也の軌跡を追ってきた。

筆者の鈴木も、研究生として田路研に在籍していた昨年(2020年11月)、増研設計の鳴門市文化会館 (1982) と鳴門市庁舎 (1962) の見学に同行し、コンクリートの造形力と、ダイナミックなプラン、きれいなディテールに感銘を受けたのが記憶に新しい。

3.資料選定やヒアリングを行い、展示内容を決定

総合博物館での展示にむけた本格的な準備は、昨年の10月から始まった。田路先生が委員長を務める実行委員会が組織され、展示を行う図面や写真の選定が行われた。田路研究室でも、増田友也研究チームの学生が、資料選定を行った。

また、増研に学生として在籍していたOBの方々へヒアリングを行うことで、当時の増研における設計活動がいきいきと見えてきた。ヒアリングは田路研究室で行われ、当時の図面や資料を手にしながら進められた。ヒアリングにご協力いただいたのは、昭和33年卒の満野久さん、昭和36年修了の土井崇司さん、昭和44年卒の人長信昭さん、昭和40年修了の上田信也さん の計4名。

4.ついに展示開始!

10月27日(水)から展示が始まり、展示を見に行った。

研究室でよく目にしていた図面などの資料のほかにも、増田建築作品の模型や写真などが展示されており、増田友也の建築家としての人生と、その建築思想に考えを巡らせることができた。

展示は5章で構成されており、1章から4章は増田友也の生涯と作品を写真や図面で追う内容であった。5章は4章までの内容とはすこし異なり、増田作品をどのように保存していくかに焦点が当てられている。鳴門市市民会館 (1961・2021解体) をはじめ、老朽化や社会の変化により、増田建築は保存するか解体するかといった議論が起こる時代にきている。

5章の展示では、鳴門市民会館で実際に使われていた観客席に座りながら、映像記録を観賞できたり、VR/AR技術を用いて増田建築の内部を歩いてまわってみたりできる。最新の技術を用いて過去の建築を保存しようとする試みに私はとても感銘を受けた。

鳴門市文化会館 (1982) の模型(大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部朽木研究室制作) 撮影:鈴木
京大会館計画案のCG動画 (京都大学工学研究科田路研究室制作) 制作・キャプチャー:田路研 沖野瞭太郎

展示は12月12日まで。京大生は無料で入場できます。(前日までに要予約)みなさんぜひ京大総合博物館に足を運んでみてください!

撮影:鈴木

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建築論の探究と建築設計の実践 -地球環境時代の都市・建築論の構築を目指す-