大阪の超高層建物
大阪市中心部には400棟を超える超高層建物が林立しています。しかし、南海トラフの巨大地震の発生が懸念されています。また、巨大な活断層である上町断層帯が、大阪市中心部直下を南北に走っています。これらの地震が発生した場合には、深刻な建物被害が懸念されています。大阪市域に建つ超高層の2割以上が免震建物で、その大半がマンションです。しかし、最悪のシナリオを考えた場合、免震建物でも大きな被害が懸念されています。そこで私たちの研究室では、断層の活動による地震が発生した際の、建物への影響を分析しています。その中でも、ここでは杭支持建築物と超高層建物に関する研究を紹介するとともに、実際に断層の活動によって発生した地震の被害調査について紹介します。
断層変位による杭支持建築物への影響評価
まず、杭支持建築物について、地震による影響の分析手法を紹介します。活断層近傍の建物被害は、震動による被害だけではありません。断層のずれによっても建物は傾いたり変形したりして被害を受けます。そこで、断層のずれによる杭支持建築物への影響を把握するための手始めとして、地盤と杭の試験体を用いた模型実験を行いました。地盤と杭の試験体はいずれも手作業で製作し、地盤の試験体は、変形を確認するため、墨汁を混ぜた砂を格子状に配置する工夫を施しました。
パルス性地震動に対する超高層建物の応答評価
次に、超高層建物に関する研究を紹介します。活断層のずれによって発生する内陸地殻内地震の震源近傍では、パルス性地震動と呼ばれる継続時間が短い大振幅の揺れが建物を襲います。このようなパルス性地震動に対して、どんな超高層建物にどの程度の被害が発生するのか、また、どんな耐震対策が有効なのか研究しています。動画は、超高層免震建物の解析結果をアニメーションにしたものです。設計では想定していなかった大きな揺れによって、建物は擁壁に衝突し、上部構造の変形が増大しています。
2016年熊本地震の被害調査
断層の活動によって発生した近年の地震として、2016年4月の熊本地震が挙げられます。熊本地震は最大震度7を記録し、木造住宅を中心として甚大な建物被害をもたらしました。林研究室では、地震被害の実態把握と被害要因の究明のため、地震発生直後から4回に渡って現地調査を実施しました。現地調査により建物の倒壊判定や地盤の微動計測を行い、倒壊被害分布を明らかにするとともに、地震被害要因について検討を行いました。
2018年大阪府北部の地震の被害調査
大阪府でも、断層の活動により、2018年6月18日に大阪北部を震源とする地震が発生し、最大震度6弱を記録しました。林研究室では、住宅や宅地の被害に着目し、現地調査を二度にわたって実施しました。調査内容は、住宅や宅地の被害状況の確認と写真撮影、地盤条件を調べるための振動計測や地形の確認などを主に行いました。その結果、ブロック塀の損壊、住宅屋根の落下や外壁のひび割れ、宅地擁壁のひび割れなどが確認されました。