高校生が大学で研究? 京都大学ELCASの実施。

2008年に理学部で誕生したELCAS(Experience-based Learning Course for Advanced Science)とは,主に理系分野に関して高校生が専門性の高い様々な学術にふれることのできる講座です。西山・谷研究室は建築学系では唯一,2017年度に引き続き2018年度もELCASを実施しています。今回は建築構造解析ソフトウェアを用い,10mのトラス橋の設計課題に取り組んだ2017年度の内容を紹介します。

建築構造の基本を学ぶ

2017年4月15日,2名の高校生が京大桂キャンパスにある,建築の研究棟にやってきました。ここから11日間,約4か月にわたり,建築物の挙動解析シミュレーションに取り組んでもらいます。指導は西山先生と,研究室の学生3名です。初日は基礎講義を行いました。ここでは固定荷重,積載荷重,地震荷重などの荷重や,構造部材の特徴と役割など建築構造に関する講義により,建築構造の基本を学びます。また,国立大学では1,2を争うほどの大きさの建築構造実験室において建築構造に関する研究の最先端の見学を行いました。その他にも,折り紙で実際に折板構造を製作することで,堅さ・強さだけで頑丈な構造が形作られる訳ではないということを体験しました。

折板構造を折り紙にて製作

材料を知る

つづいて4月22日,実験から,鉄筋コンクリート構造の力学特性を理解してもらいます。建築構造解析ソフトウェアの使用にあたり,重要となるのは材料のモデル化です。材料のモデル化が誤っていると,ソフトウェア上の建築物の挙動と実際の挙動が大きく異なってしまいます。今回は,鉄筋コンクリートの主要な材料であるコンクリートと鉄筋に加わる力と生じる変形量の関係を把握するため,建築構造実験室においてコンクリートシリンダーの圧縮試験と鉄筋の引張試験を行いました。受講生自身にひずみ測定用の抵抗線ひずみゲージの貼り付けを行ってもらい,各試験結果から得られた荷重とひずみの関係から,それぞれの材料の応力-ひずみ関係を作成しました。そこからコンクリートと鉄筋の特性を把握し,ヤング係数や降伏,破壊について学び,ソフトウェア上で材料をバネに置き換えるとはどういうことなのかを理解してもらいました。ここから,課題に本格的に取り組んでいきます。

左/抵抗線ひずみゲージの貼り付け。右/実験で得られたデータから応力-ひずみ関係図を作成。

10mのトラス梁の設計

そしていよいよ,5月27日から構造解析に取り組んでもらいます。まずは簡単なトラス構造をバネにより実現し,実験を行いました。実験結果と建築構造解析ソフトウェアによる解析結果を比較し、実験値と計算値が異なることを確認し,誤差の原因を考え,ソフトウェア上で高い精度で予測できるように工夫をし,構造解析ソフトの使い方に慣れていきます。

バネを使って作成したトラス構造に力を加え、載荷点の変位を測定する

いよいよ,10mトラス梁の設計に取り組みます。設計条件はトラス材に生じる応力を,許容引張および圧縮許容応力度以下に収め,全体たわみを1/300以下にすることです。ここでは,材の重さなども検討し,コストパフォーマンスが高い構造をつくり上げていきました。最終的には設計したトラス梁について論文・発表用スライドの作成を行いました。

参加した高校生にとってははじめて体験することばかりだったはずですが,実験やモデル化,構造設計に真剣に取り組んでくれ,実際に実験で得たデータを持ち帰ってグラフを作成したり,興味の出たことに関してインターネットでより詳しい用語を調べたりと,深い学習ができたと好評でした。実際,彼らは大学院入試の問題を解けるほどにまでなっていました。今後のELCASでは,構造だけでなく,意匠・環境等も併せて建物の総合的な設計を考えるプログラムがあっても面白いかもしれません。

以上2017年度ELCASの報告でした。

この記事の研究室

西山・谷研究室

人々の安全と財産を守り、快適な空間を長期間にわたって提供する。