コワーキングスペース+子育て支援、働き方改革が問われる 日本のオフィスでより良い子育て環境を探る。

毎日のようにテレビや新聞で目にする「働き方改革」の文字。いま日本では様々な職場環境の刷新が行われています。三浦研究室では、オフィス環境といった視点から現代の働き方を探るなかで、コワーキングスペースと子育て支援の連携に注目し調査を行っています。

そもそも「コワーキングスペース」って?

「企業のオフィス環境」といえばどんなものを想像しますか。同じ会社の人間のデスクがきちんと並んでいて奥のほうには偉い人がいて……という場面をイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、近頃はそういった従来の形から逸脱しより円滑なコミュニケーションを生んだりワークライフバランスを担保する働き方を提供するオフィスが増えつつあります。

コワーキングスペースというのもそのひとつ。一つの企業ではなく様々な企業、職種の人が集まり、デスク等の設備やネットワーク環境を共有しつつ仕事をするというオフィス形態のことをいいます。他職種の人とのコミュニケーションを促し、新たなコミュニティ形成やアイデア、ノウハウの共有といった、従来のオフィス形態では叶わなかった働き方ができる点が魅力。昨今注目を浴びており、その拠点は都心から周辺地域へと拡大しています。

子育てをしながら働くということ

女性の社会進出による共働き家庭の増加、長時間労働により制限される家族の時間、一方で用地と保育士不足により進む待機児童問題。これらの悪循環にブレーキをかけようとする働き方改革ですが、「子どもを産んだら仕事ができない」という固定観念はまだまだ拭い去れません。

そこで生まれたのが、コワーキングスペース+子育て支援という考え方。
政府が待機児童解消のため設置を後押しした「企業主導型保育所」という制度により、企業が従業員向けの認可外保育所を用意するという事例が増えています。こうした子育て支援をすることで、認可の保育園へ通うことが叶わなかった子どもを預けることができ、子どものお迎えの時間を気にすることなく仕事に集中できる環境を整えています。また、24時間対応など柔軟性のある保育所が多く、会社に近いので緊急時には親がすぐ駆けつけることができたりと安心できる点も評価されています。

いつか働くオフィスを見据えて

メリットだらけに思える企業主導型保育所ですが、事例調査によってまた問題点も少しずつ分かってきました。親の目の届く場所で保育をすることは一見利点があるように思えますが、子ども自身が混乱し親の元へ行きたがったりと、我慢を学ばせる場でもある保育所にはそぐわない面があるそう。またオフィスビル単位で保育所を設立しても、子どもを連れて都心へ通勤することが困難なため、利用者が集まらず補助金が減額されて継続困難になることもあるようです。

こういった点を考慮しつつ、働く場所と子どものいる場所の位置関係に着目しながら手法を探っていくことが目下の研究内容です。数年後、自分達も働く上でとっても身近な問題。空間配置という視点からよりよい就労環境を作り出せれば、と日々研究しています。

この記事の研究室

三浦研究室

人間の行動や心理,関係性を解析し、次世代の建築デザインにつなげる。