“計画系・構造系・環境系” 多岐にわたる京大建築について。

京都大学の建築学科・建築学専攻における3つの系統(コース)について、どのような分類になっているのか、それぞれの系統ではどのようなことを研究しているのか、なるべくわかりやすく説明します。

とにかく幅広い!京大建築の研究分野

京大建築の中では、様々な分野や角度から“建築”に関わる研究をすることができます。
ーーとは言うものの、私自身、京大の建築学科に入学した時点では、
「建物を建てることについて勉強できる」
くらいの漠然としたイメージしか持っていませんでした。
入学当初から既に、建築についてかなり知識豊富な友人もいましたが、実際の京大建築の研究範囲の広さは、きっとそんな彼らの想像でさえも上回ったことでしょう。

そんな京大建築の分野は、大きく分けて
・計画系
・構造系
・環境系
の3つに分類することができ、専門科目や研究室はそれぞれ、この3つのいずれかに属することになります。
今回は、それぞれの系統(コース)を紹介することで、多岐にわたる京大建築の研究分野についてお伝えできればと思います!

いわゆる“建築”のイメージ? 計画系

まずご紹介するのは計画系。
こちらではざっくり言うと建築のデザインや計画を行っています。しかし一口にデザインや計画といっても、建築設計・デザインを扱う分野から、建築計画や居住空間をメインに扱う研究室、建築論や建築史・都市史についての研究室、建築生産や防災、まちづくりを扱う研究室など様々です。

計画系の大きな特徴としては、学部卒業時に卒業論文ではなく卒業設計を行う場合がほとんどである、ということが挙げられます。提出締切前になると下回生達が4回生のお手伝いに来て、桂キャンパスの廊下やエレベーターホールなどあちこちで模型を作っている光景は、京大建築の風物詩と言えるでしょう。

協力して大きな模型をつくります
模型台やスクリーンも設計します!

また、計画系の先生には、竹山聖先生、平田晃久先生など、研究者としてだけではなく建築家として有名な方がいらっしゃるのも大きな魅力ではないでしょうか。

そうそうたる先生方に囲まれる卒業設計講評会の様子

安全設計を目指して! 構造系

次に、構造系について説明したいと思います。構造系はその名の通り、建築の構造体についての研究を行う分野です。

構造体とは、建物を支える骨組のことで、基礎や柱、壁などにあたりますが、これらの材料にかかる力をシミュレーションしたり、実際に実験を行ったりして、安全な建物を作るための研究をしているのです。

こちらの場合、鉄筋コンクリート専門、鉄骨専門の研究室があったり、地震に耐えるための研究、風に耐えるための研究を行う研究室があったりと、10の多彩な研究室により構成されています。

特徴としてはやはり実験が多いこと、それもダイナミックな実験が多いことが挙げられるのではないでしょうか。安全ヘルメットと作業用つなぎを着用して実験に取り組む姿に憧れる人も多いと思います。

鉄骨部材を用いた構造実験の様子(画像提供:聲高研究室 高塚康平)
初期超高層ビルを再現した実大の柱梁接合部試験体(建築学専攻ホームページより)

建物の環境をデザインする! 環境系

最後にご紹介するのが、環境系です。環境系では建築の屋内・屋外環境についての研究が行われており、研究室としては現在5つあり、それぞれ音・光・温熱・空気を専門としています。

ざっくり言うと、安全で快適な物理的環境をつくるための研究、といえます。コンサートホールに美しく音が響くように…といった問題から、快適に過ごすための室内の明るさや温湿度、通風についての研究、また安全な避難のため火災時の室内での炎や煙の広がりを調べる実験・シミュレーションまで、各研究室によってまったく異なる課題について取り組んでいます。

建具の開閉による効果的な室内通風の検討(建築学専攻ホームページより)
火災実温度センサーによる火災感知実験(ウレタン燃焼)(画像提供:原田研究室 仁井大策)
トランスオーラル再生システムの音像定位実験(画像提供:高野・大谷研究室)

“建築”という言葉からは一番イメージしづらい系統かもしれませんが、空間としての建築を、理系的にわかりやすく評価できるというのが環境系のポイントでしょうか。実は、私たちの生活に一番身近なテーマかもしれません。

分かれ道は・・・?

3系統の紹介は以上になりますが、最後に、京大建築に入学した場合どのようなタイミングでこのようなコース分けがあるのかについて、少しお話しします。

どの系統に所属するか、明確に決断をするのは研究室配属の時で、これは4回生春と、大学院入学時の2回のタイミングがあります。

この2度ある研究室配属はそれぞれ全く独立したもので、例えば4回生春の配属で希望の研究室に入れたからといって、大学院に入っても同じ研究室に配属されるとは限らず、また逆もしかりです。

自分のやりたい事のできる研究室に入るためにも、3回生までの各分野の専門科目を通して、一番興味の持てる分野、やりたいと思える研究を見極めることが大事なのではないかと思います。

ちなみに私は、もともとものづくりに興味があり、そのうえで学科を選択するにあたり建築に興味をもち、「建物をつくるってかっこいい!」という気持ちで入学しました。

そんな思いから「かっこいい建築をつくりたい」と、はじめは計画系に憧れを抱いていましたが、設計課題や講義を通じて、建物や空間そのもののデザインよりも、その仕組みや機能について考える方が自分にはわかりやすく、面白く感じるようになりました。

その中で、温湿度を制御して快適・適切な空間を生み出す建築を考える、ということに特に興味を持ち、4回生時に小椋研究室を選び、現在に至ります。

この記事でお伝えしたかったのは、どの分野、どの研究室にもそこにしかない面白さや魅力があるということ、そして京大の建築学科ではあらゆる側面から建築というものを考え、研究をすることができるということです!

まずはぜひ、色々な研究室のページや紹介記事を読んでいただければと思います。

この記事の研究室

小椋・伊庭研究室

人の暮らしと文化を守るため、建築に関わる熱湿気問題を解く。

小見山研究室

設計という行為・建築という思考がもつ可能性を引き出していく。

聲高研究室

鋼材の特性を最大限に活かした空間構造の研究と開発。