世界最高性能の放射光を利用してレンガを調査
兵庫県の播磨科学公園都市にある、世界最高性能の放射光を生み出す大型放射光施設・SPring-8にて、京都大学建築学専攻小椋研究室の学生がレンガを用いた実験を行いました。(開催日:2018年4月19日〜20日)
今回の実験は、同研究室の博士後期課程3回生である水谷悦子さんが、自身の研究テーマである『組積造建築物の劣化現象を予測する解析モデル』の開発のため、あらかじめ塩溶液を吸水させたレンガのCT画像を撮影し、レンガの中でどのように水分や塩の結晶が存在しているかを確かめる、というものでした。
この撮影画像をどのように役立てていくのか
SPring-8の生み出した放射光を利用して撮影されたCT画像は、これまで学内の機器などで撮影したものと比べより高い解像度で、レンガの断面をとても鮮明な画像で確認することができます。
今後この画像を、吸水前後で比較をしたり、順番に重ねて三次元化したりなど、レンガの空隙、水分、結晶を分析していくことでレンガの状態を調査し、劣化現象がどのようなメカニズムで進んでいくかの検討を行っていくそうです。
歴史的建造物を守っていくため
そもそも水谷さんは、学部4回生の頃からトルコにあるハギア・ソフィアというレンガの建物の、塩類風化についての研究を行っていました。
塩類風化とは、壁などの材料の内部や表面で硫酸ナトリウムなどの塩の結晶が析出し、材料が破壊されてしまう現象です。
今回の撮影画像の分析からレンガにおける塩類風化のメカニズムをつかむことができれば、ハギア・ソフィアなどの歴史的建造物の劣化を予測することで保全していくための対策案につなげることができます。
SPring-8の学生支援
この実験はSPring-8の実施している「大学院生提案型課題」に採用され、支援を受けてSPring-8を利用させていただくことができました。
学生でも無理なく課題を実施できるようにと、旅費や消耗品実費負担費等の支援をだけでなく、学生の研究テーマにおける放射光利用の可能性、測定手法などの相談も行っていただくことができます。