地震時の液状化現象の再現!? 土層を用いた振動台実験。

地震時に港湾地域などでしばしば発生する液状化現象。大きな被害をもたらすこの現象を、宇治キャンパスの振動台をつかって再現し、砂の斜面が強い揺れを受けた時の液状化現象や斜面崩壊の様子を観察するという実験を行いました。

液状化現象とは?

皆さんもニュースなどで耳にしたことがあるかもしれませんが、液状化現象とは水を含んだ砂質の地盤が地震のときに液体のように噴き出す現象です。地盤の砂粒同士が押し合う圧力を砂の間にある水の圧力が地震によって上回ると、水が砂の粒子を押し広げて上昇し、水の中に砂が混じったような状態になって液体のように流動します。この現象が原因で、地盤が弱くなって建物が壊れたり、地面から砂混じりの水が噴き出したり、地下のマンホールが地表に浮き上がってきたりすることがあります。2011年の東日本大震災では東京ドーム900個分に相当する面積で液状化現象が起こったといわれています。

2011年東日本大震災による液状化現象で浮き上がったマンホール(出典:一般財団法人消防防災科学センター)

斜面における液状化現象を再現するための実験を遂行

先に述べた液状化現象は平面だけでなく、斜面においても起こります。その時の液状化の様子や、斜面内部の力の変化を調べるために、2017年10月2日(月)〜6日(金)にかけて、土層という大きな容器を用いた振動台実験を行いました。土層に一定の水分量を含んだ砂を入れて斜面を作成し、砂の斜面が強い揺れを受けた時の液状化現象や斜面崩壊の様子を観察しました。振動台実験とは、宇治キャンパスにある振動台という地震時の揺れを再現することのできる特殊な装置を用いて、その上にのせた試験体に地震時の揺れを作用させる実験を行うことです。この実験は防災研究所外国人共同研究員の柴 少峰(Chai Shaofeng)さんが担当しました。

振動台の上の土層を固定した後、少しずつ砂を入れて均等になるように締め固めながら徐々に斜面を作りました。また、砂の中に加速度計、水圧計、ひずみ計など、データを調べるための機械を埋め込む必要があったこともあり、砂の斜面の作成にはまる3日間かかりました。

土層の中に完成した砂の斜面

10月5日〜6日に振動台実験を行い、水分を含んだ砂の斜面に地震時の揺れを作用させました。結果として斜面の一番低くなったところの近くで液状化が発生しました。また、斜面の上の方では、砂が下にずれたことで亀裂が生じました。

実験後の斜面の様子

将来の地震による液状化対策に向けて

実験の際に砂の斜面の中に設置していた計測機械のデータを解析することで、斜面のさまざまな位置での水圧の変化などのデータが得られました。これらのデータから、どのような条件でどのような現象が起こるのかを調べることができます。これを実際の地震にも応用することで、液状化の被害の軽減、対策に結び付けることが今後の目標です。将来は地震が起こっても液状化の被害が起こらない時代が来るかもしれませんね。

共同執筆者

松島 信一 | 教授

1968年東京都武蔵野市生まれ。知立、春日井、鎌倉、Hartsdale、鎌倉、世田谷、名古屋、練馬、宇治を経て、京都府在住。名古屋大学大学院工学研究科を修了、ゼネコンの技術研究所で研究・業務に従事した後、2009年5月より京都大学防災研究所に勤務。スポーツ観戦(主に野球)と車の運転が趣味。プレーするのはテニス、ゴルフ、野球。好きなものは、伏見の酒、ロワールのワイン、長岡京のビール、山崎のウィスキー。

この記事の研究室

松島・長嶋研究室

地震防災を、揺れの原因から考える。