-吉田南居場所展- 大学図書館を占拠!学生主導の作品展

建築学科以外の京大生・京大関係者にも建築作品を見てほしい。そんな思いで始まった展示会は、今回で4度目となります。場所は吉田南総合図書館!なぜ、図書館で…?

学部2回生と学部3回生では、建築を設計してみる設計演習という授業があり、多種多様な作品が出来上がります。これらの作品は、提出後に建築学科の入る総合研究9号館の4階で展示されますが、多くの人の目に触れることはありません。そんな中、あることをきっかけに吉田南総合図書館で設計課題を展示していただけることになりました。今回の記事では、吉田南総合図書館の職員の方へのインタビューを交えながら、その経緯やどんな展示会なのかについて紹介していきます。

なぜ図書館で…?

では、なぜ、吉田南総合図書館で建築学科の作品を展示することになったのでしょうか。

さきほど話に出た設計演習の課題は2回生で4つ、3回生で4つあります。パビリオンに始まり、住宅課題、都市課題、図書館課題……? 図書館課題?

各課題は、毎週先生に作品の相談をするエスキスと、提出後にできた作品に対して先生方から意見を頂く講評会があります。「建築の人だけじゃなくて、図書館の人に作品見て意見ほしいね。」図書館課題では、エスキスの準備が大変で、エスキス前日に製図室で徹夜する中でこんな会話が生まれました。この話はなかなか盛り上がり、なんとか実現できないかなと。

そういうわけで、こんなつぶやきをしてみました。すると、なんと!

この出会いから、話はとんとん拍子に進み、2022年1月25日から2月4日にかけて2回生最後の課題である図書館課題を吉田南総合図書館で展示していただけることになりました。試験期間中は図書館の利用者数が特に多いということから、この期間に展示することになります。この時の展示名は「人の居場所、本の居場所展」。

図書館ロビーとロビー脇の閲覧室をお借りし、約20名分の作品を並べました。2週間の展示期間中、図書館を利用する学生や教職員の方から多くのコメントをいただけましたが、特にうれしかったのは吉田南総合図書館の職員の方が全作品へのコメントを下さったことです。やはり図書館を普段から利用している方々からの意見は、建築学科で得られる意見とは別角度のものが多く、大変勉強になりました。

吉田南居場所展ってどんな企画?

ここからは吉田南総合図書館の坂本さん・三本木さんへのインタビューとともに、吉田南居場所展がどんな企画か紹介したいと思います。

右から、坂本さん(以下、「坂」)と三本木さん(以下、「三」)

吉田南総合図書館の職員の方で吉田南居場所展に協力いただいています。

―――まずは吉田南総合図書館がなぜ建築展の企画を受けてくださったのかを伺いたいです。

三: 「図書館の課題の展示をできたら嬉しいな」と宮田さんがつぶやいたのを、うちのSNS担当がよかったら相談してねみたいな感じで反応しましたね。そうしたら本当にメールをくださって、最初なので企画書も用意してくださいましたね。

宮: 本当は毎回企画書準備する方がいいですね。(笑)

三: 偉いなあ、しかも2回生らしいでと、図書館側はびっくりしました。協力を決めた理由としては、図書館で図書館課題の展示をするという部分と、学生さんからの発案なので熱意に応えたいというのが大きかったのだと思います。

宮: ありがとうございます。第1回では建築家の紹介も設置しました。

三: 建築家の紹介はあったらあったらで図書館内がにぎやかになるのでいいと思います。本の紹介も兼ねているので図書館でやる意義が出ました。

坂: 私は当時を知らないのですが、どんなものですか。

三: 学生さんがつくってくれた、看板みたいな建築家紹介のボードです。それを知っているからか、安藤忠雄さんとかの大きな本を何冊買っているので、去年より建築の本は増えていると思いますよ。

宮: 吉田キャンパスの図書館の中では吉田南には、作品集とか、ビジュアル寄りの建築本が多い印象です。

三: ビジュアル的に綺麗なものは割と多いですね。

初回の吉田南居場所展では学生一人一人が建築家紹介ボードを作った。また、学生が特に薦めたい本を選び、図書館の方に用意していただいた。

―――図書館内での評判はどうでしたか。

三: 職員という立場としては「吉田南でなんでやってるの?」と聞かれた時もありましたね。建築学専攻のある桂図書館さんでやらんでよかったのかなと思ったんですけど、若手の方だから慣れたところでされたいんじゃないかなと。建築学科はこちらでの授業も多いので、桂キャンパスまで運ぶのは大変だからじゃないかなとも思いました。

宮: その解釈で、間違いないですね。せっかくご縁をいただいたので、これからもこちらでやらせていただければ嬉しいなと思っています。

坂: 図書館というものは、本が置いてある場所というよりも、人と情報を結びつける場所というのが本来の存在意義なんです。この展示会もそうで、他の分野の方が新しい発見をしたり、建築っていいなあと思ったり、そういう場に図書館がなってくれたら私たちも嬉しいですね。

宮: 僕らとしても建築学科は人数が少なくて、他学部の人にそもそも京大に建築学科があることを認識してもらえてないことも多々あります。そうした中で「吉田南で見たよ」という反応がちょくちょくもらえて、ありがたいなと思っています。

三: 学外の方が来たなと思ったら、「展示会見に来たんです」って言われることも結構あります!

坂: わざわざですか! すごいですね。

宮: 学生のネットワークの中で広がっているのかなと思います。学年のSNSで発信していても吉田南の展示会は反応が良いです。

―――ちなみに、建築学生の作る図書館はどうですか?

三: 最近の流行りだと植物と絡めてくれたものが多いんですかね。天井に植栽を植えてくれていたりとか。いいなと思いつつ、図書館は湿気との戦いなので、「水はけはどうだろう?」「大丈夫かな?」って思います。

宮、坂: (笑)

三:職員目線では、そういう現実的な思いと、こういうおしゃれなとこで本を読んでみたいなあっていう思いと両方があります。実現できたら、いいなとは思いますが。

坂:ほかの図書館ですけど、図書館として最低限この条件を守ってほしいというのを度外視してデザインなどを重視した結果、ものすごく日光が本に当たってしまうなどの弊害が出ているところもありますよね。

宮:その図書館は極端な例ですが、設計演習だと自由に発想することが大切にされているので、そういう面は間違いなくあるかと思います。

三:アイデアを重視して考えるんですね。見ている分にはすごく楽しそうなものが多いです。図書館だと、文字情報が多いので、立体物があるのが新鮮で嬉しいです。図面や説明で、こういう風に立体を作ってはるんやなあっていうのが目に見える形で展示されているのが嬉しいですね。

宮:確かに立体物を図書館ではあまり見ないですね。

第1回吉田南居場所展の様子。当時の2回生の図書館課題の一部

―――建築学科の中に籠っていると視野が狭くなる部分もあると思うので、学科外の方からコメントいただける機会はうれしいです。

三: 展示を観にきた学生さんがそれをきっかけに図書館に通っていただければ、開催する意義があると感じますね。総合図書館を利用しない学生さんというのはまだそれなりにいるみたいなので、利用するきっかけをつくってくれているのがありがたいです。

宮: 初めて気付きました! これは設計にも活かせそうですね。展示を行うことが、図書館の利用者を増やしたり、交流を生む場としての図書館だったりを考える機会になります。

三: それと学生さんの団体ではないんですけど、この夏に京都大学で開催される2023年度の日本建築学会大会でも吉田南総合図書館が展示会場のひとつになっているので、ご縁があったのかなと思っています。

宮: 他の団体といつか被るかもしれないですね。早く連絡したほうがいいですね。(笑)

三: (笑)。この展示会については、そろそろかなって思うと、お声掛け頂いているので、そういう意味ではだいぶリズムが私達に伝わってきたんじゃないかと思っています。あと、親御さんが来てるんですかね?

宮: 本当ですか? (笑)

三: 図書館の利用者の方とは少し年齢が違うかなという方がいると親御さんなのかなと思っています。やっぱり子どもの作品展示は見たくなるのかな。

坂: 本人にはいわずこっそりね。(笑)

三: 結構見た気がします。(笑)

宮: 初めて聞いた情報です。(笑)

吉田南居場所展では紙のコメントシートとSNS上でのコメントを共に集めている。

―――これから先、この展示会について希望や、こうなるんだろうなと考えていることはありますか。

三: これからまだ続けてほしいですし、続いたらうれしいですね。建築に限らずいろいろな専攻の学生さんによる成果物を見せてもらえると楽しそうだなと思います。ただ、模型みたいにわかりやすいものが他の学部ではなかなかないですよね。模型は分かりやすく楽しめるのも魅力ですね。

坂: 次の展示で模型を拝見できるのが、今から楽しみです。

宮: ありがとうございます!また、これからもよろしくお願いします。

吉田南総合図書館。ロビーをお借りして展示をさせていただいている。

2回目、3回目、そしてこれから

第1回の展示会が終わったのち、2回生から3回生へとあがった私たちの設計演習課題は博物館と小学校。図書館とは関係ありません。しかし、第1回の展示会が好評だったことから、「展示させていただけないかな」と展示を打診したところ、「いいですね!」とご厚意で再度展示させていただけることになります。第2回からは私たちの学年だけでなく、同様に設計演習を履修していた当時の2回生も出展しました。

第1回の展示名「人の居場所、本の居場所展」から取り、この企画展は「吉田南居場所展」として継続しました。

第2回吉田南居場所展チラシ
(2022年7月22日〜8月4日)

第3回では、吉田南居場所展の直後に大阪・MBS 毎日放送で3回生最後の課題である「茶屋町課題」を展示する計画がありました。第2回までは、展示には吉田南総合図書館の備品をお借りしていましたが、第3回では直後のMBS 毎日放送での展示会で展示台を作成することになったので、二つの展示会で共通して使える展示台を作り、展示としての一体感も出ました。

そして、私たちの学年が吉田を離れ桂に移動するのに合わせ、この企画も後輩に引き継がれました。次は2023年7月18日~8月3日に第4回となる吉田南居場所展が開かれます。ぜひ、吉田南総合図書館へお越し下さい!

今回の吉田南居場所展チラシ
(2023年7月18日〜8月3日)