和歌山の漁村地区のお祭り調査 〜なぜ京大防災研が祭り調査を!?〜

牧研究室では和歌山県由良町衣奈地区を研究対象地としてこの地区の事前復興について調査しています。その活動の一環として、毎年、衣奈地区のお祭り(衣奈八幡神社秋の例大祭)について調査を行っているので、その概要を紹介します。

事前復興とは?

事前復興とは、災害が起きてから復興について考えるのではなく、災害が起きる前に被害を予想し、あらかじめ復興について考えておこうという取り組みです。災害後は復旧作業や応急対応などで、なかなか復興について考える余裕がないため、事前に復興について考えておくことで、災害後の復興をスムーズに行うというものです。和歌山県由良町衣奈は紀州水道に面する小さな漁村地区で、今後発生が懸念される南海トラフ地震において、甚大な津波被害が予想されています。そのため、この地区において事前復興を考えることはとても重要であり、牧研究室ではこの地区を研究対象地として、事前復興のお手伝いをさせていただいております。

事前復興に関わるお祭り調査

では、なぜ“お祭り調査”をする必要があるのでしょうか。事前復興の考え方の一つに“地域の記憶の継承”というものがあります。これは、災害によって失われてしまう街並みや文化などを災害後にも引き継いでいこうというものです。この“記憶”にお祭りもあります。調査では、衣奈地区にはお祭りに関する資料が一部しかなく、津波により資料や担い手を失った際には、祭りを継続して行うことが困難であるという状況が分かりました。そこで、祭りの調査を行い、資料を作成し、災害後にも後世に受け継がれるよう、研究室で活動しております。

事前復興における地域の記憶の継承

担い手不足の地域のお祭り、研究室のメンバーも参加!

祭りでは地元の若者が神輿を担ぎ、神社へ納めるというものですが、最近では若者の担い手が不足しており、牧研究室の男子学生が神輿担ぎの手伝いをしております。1回目の調査では、白装束の地元の若者に交じって、即興のハッピを羽織るだけでしたが、前回の2回目では、白装束や警護の衣装を着て祭りに参加しました。男子学生たちはすっかり「地元化」して、地元の若者とも交流を深めることができました。人口減少により、こうした地域のお祭りは縮小傾向にありますが、地域の“記憶”を途絶えることなく、存続してほしいものです。

祭りに参加した牧研究室のメンバー

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災害から地域をどのように再建するのか、災害にどのように備えるのか。