2024年度、わたしたちの卒業設計展。―2024年度卒業設計講評会・展覧会レポート―

 2025年2月14日に開催された2024年度卒業設計審査会と、同15日~20日に開催された卒業設計展を、その準備段階を含めレポートします。

わたしたちがつくる卒業設計展

 2025年2月、わたしたちは厳しい寒さと大雪に見舞われながらも、手を動かし作品を作り続けました。しかし、わたしたちがつくっていたのは、実は自身の作品だけではありません。

 京都大学の卒業設計展では、出展学生による展示計画や講評会のスケジュール提案、展示会場の設営、展覧会のポスター制作や運営などを行っています。今年度も、展示計画について12月頃から学生間で議論を重ね、2月に入り講評会が迫るなかでも協力して展示会場を設営し、自身の作品とともに卒計展そのものを作り上げました。

 今年度は、昨年度から展示計画を大きく変更し、1階ホールに多くの展示ブースを設ける計画を採用したため、学生間及び教員の方との相談や議論が不可欠でした。誰もが自身の制作に打ち込みたいなかでも、皆が協力して議論や設営を行ったことで、高いクオリティの展示会とすることができました。また、展示会のメインビジュアルとなるポスター作成などでは、出展者以外の学生の協力もありました。

 このような背景もあって、京大の卒計展は自由度が高く、わたしたちの学部4年間の集大成であるという面が非常に色濃く出るのです。

27人の卒業設計

 2025年2月14日、計画系22名、構造系4名、環境系1名の計27名の作品が桂キャンパスC2棟の展示会場に集い、わたしたちの卒業設計展が完成しました。

 今年度は計画計の学生だけではなく、構造系・環境系からも卒業設計を行った学生が出展し、例年以上に様々な角度から、バラエティに富んだ建築の提案が行われました。

 同日に行われた審査会には、計画計教員17名(冨島義幸、Thomas Daniell、三浦研、平田晃久、田路貴浩、金多隆、神吉紀世子、牧紀男、小林広英、岩本馨、小見山陽介、西野佐弥香、柳沢究、安田渓、岩瀬諒子、杉中瑞季、清山陽平/敬称略)と、非常勤講師7名(畑友洋、山田紗子、平野利樹、高野洋平、中山英之、河井敏明、森田昌宏/敬称略)が参加。より多くの講評の機会を求める学生の声により、昨年度同様3グループに分かれての講評となり、作品を囲んで学生と教員の間で熱い議論が交わされました。

 学生の発表およびその場での講評後、教員による審査が非公開で行われ、武田五一賞(最優秀賞)及び優秀賞が決定されました。今年度は先述の通り、構造系・環境系からの作品もあったことから、議論・評価の軸としてエンジニアリングの視点と、観念や概念の理解といった視点などが入り交じり、例年にも増して難しい議論であったとの感想も聞かれるなど、高レベルな展示会・審査会となりました。

出展作品は以下の通りです。

・閑念真優(平田研究室)「群像の瞬き」(武田五一賞)

・大槻一貴(田路研究室)「ちいさな一歩のかさねかた」(優秀賞)

・長友蓮(大﨑・張研究室)「二層の正方形オーゼティック構造とカーフベンディングを用いたドームの設計」(優秀賞)

・大坪橘平(神吉研究室)「くりとくら」(優秀賞)

・井上陽平(三浦研究室)「漕ぎつなぐ琵琶湖のミチ」(優秀賞)

・赤路朋哉(神吉研究室)「火山の布置を象る」

・安達志織(平田研究室)「大地と虚空」

・荒木大(西嶋研究室)「レジームシフト」

・五十嵐果保(小見山研究室)「豊島エスプラナード ―まちを紡ぐ劇場のかけら―」

・伊勢玉奈(田路研究室)「祝いの手引き ―高畑にしるすいのりの序―」

・大野ひかり(三浦研究室)「駐まるところ ―父母ヶ浜駐車場開拓計画―」

・越智遥(Daniell研究室)「S-cape

・小池駿輝(柳沢研究室)「木を見て、森を見て、技術を見る―伝統構法に基づく木架構による立体林道の構想―」

・澤村俊樹(田路研究室)「原郷の土間」

・鈴木丈登(平田研究室)「人間と自然の共生について」

・永田伊吹(小林・落合研究室)「呼称某湖上塔」

・野田侑里(大谷研究室)「こどう ―音響的アプローチによる設計手法の提案―」

・蓮沼岳人(三浦研究室)「芦屋ラグジュアリー 〜余裕が生む商いと暮らし〜」

・藤原里衣子(小林・落合研究室)「com-path ―京都大学におけるコモンスペース再編計画―」

・堀江達仁(神吉研究室)「緩緩坂」

・松尾孝太郎(大﨑・張研究室)「Polyphony」

・松岡千晴(三浦研究室)「心の芽吹き ―町が織りなす居場所―」

・水﨑恒志(柳沢研究室)「メアリーの2つの家」

・宮崎怜(田路研究室)「建築×音楽 空間を満たす音」

・村上凌(小見山研究室)「だが、ともに生きることはできる。」

・森翔一(神吉研究室)「船と陸の接ぎ方」

・吉野平馬(荒木・藤田研究室)「円弧状ミウラ折り球面シザース機構を用いた仮設住宅設計」

展覧会としての卒業設計展

 審査会を終えた翌日15日から20日まで、京都大学建築学科2024年度卒業設計展として、一般公開がなされました。他大学の学生や一般の方、企業の方、学生や教員の家族など多くの方にお越しいただき、盛況の後、わたしたちの卒業設計展は幕を閉じました。

 卒業設計は学部4年間の集大成ではありますが、ここは決してゴールではありません。この先も、わたしたちは研究や設計など、それぞれの道を歩み続けます。