介護施設の建築空間の形態を評価する
介護施設と聞くと、大病院のように白くて少し無機質な内部空間をイメージする人もいるのではないでしょうか? 昔はそのような管理者の目線で計画された建築物もありました。しかし近年では入居者に寄り添った、入居者が自分らしく生活できる空間を意識した空間になるように様々な工夫が試みられています。
三浦研究室では、人手不足で身体的にも精神的にも負担の大きい介護職員と、生活の質が守られるべき入居者の双方にとって、施設が適した建築環境となっているかを評価します。そして、その評価方法や分析結果を用いてよりよい建築計画・設計に活かす方法を考えます。
介護で重要な「見守り」のしやすさを isovistで評価する
介護施設には様々な種類があります。そのうちの1つ、特別養護老人ホーム(「特養」と呼ばれる)は、著しい障害により、常時介護が必要なお年寄りが入所し、日常生活に必要なサービスを受けることができる施設です。介護職員は入居者が介助を必要としないときでも、手を差し伸べられる位置から観察、確認し、何か起こった時には自立の支援を行う必要があります。これを見守りと呼びます。
可視領域 isovistを介護に適用する
3Dモデリングソフトを使用し、実際の施設の壁や柱、家具まで再現し、可視領域を解析します。おなじ空間の中でも、見えやすい場所(可視領域が広い場所)と見えにくい場所(可視領域が狭い場所)が分布していることがわかります。
このような空間解析に加えて、介護職員と入居者へのアンケート調査や行動を合わせて分析すると、その介護施設の問題点が見えてきます。
例えば、入居者同士の距離が近いことによって人間関係が問題となる、トイレの前の入りくんだ部分が死角となり見守りにくい、食事以外の時間を過ごす場所が少ないなどといった問題点です。
今後は、そのような問題がより少なく、介護職員にとっては見守りやすく、かつ入居者にとっては居心地の良い空間かどうかを評価しながら、新しい施設の計画・設計に反映させる方法を検討していきます。
引用
ユニット型特養における可視分析を通した見守り空間に関する研究
建築学専攻 建築環境計画学講座 三浦研究室 竹内萌