建築学科から広がる道 安藤奨馬 [小椋研M2 テーマパーク開発・運営企業就職予定]

建築学科を出たら設計の仕事に就くものだと思われがちだが、出身者の仕事はそればかりではない。多様な進路に進む卒業生・修了生にその道を選んだ理由や、今後の目標などを聞く。

人を笑顔にすることの魅力

建築学生の学ぶ対象はとても幅広いです。哲学、歴史に始まり芸術、物理、プログラミング、国語力など。こうしたことを学んだ人材はきっと他の環境でも活躍しているはず。

多様な進路に進む卒業生・修了生になぜその進路を選んだのか、今後の目標などを聞くコーナー。今回は在学しながら、就職支援サービスや、Instagramを活用した京都の観光情報発信サービス「KYOTO STYLE」を展開し、多方面にアンテナを張り続けている小椋研究室の修士2回生、安藤奨馬さんにお話を伺いました。

安藤さんは環境系の研究室に所属していますが、来春からテーマパーク開発・運営企業に就職することが決まっています。さまざまな活動をアクティブにこなす安藤さんはどのような想いで進路を決められたのでしょうか。

ベトナムでの笑顔もテーマパークでの笑顔も一緒の魅力

—— 安藤さんは来春からテーマパーク開発・運営企業に就職されると伺ったのですが、そもそも京都大学の建築学科に入学された理由はなんだったのでしょうか?

安藤—— まず第一に親が工務店経営していたので、小さいときから家が建っていく過程を見ていて、「自分も大きくなたらこういう風な仕事をしているんだろうなあ」とぼんやり思っていました。あと図画工作で細かいところにこだわってつくることが好きだったのも大きいですね。

—— 実際に入学してみていかがでしたか?

安藤—— 建築家になるもんだと思って入学しましたが、課題などをこなしていくうちに自分は感覚的なデザインよりも、もっと機能的に、人が求めていくことを叶えて笑顔を作っていくことが好きだと気づきました。なので研究室での活動もその思いに沿ったところを選びました。

—— どのような研究テーマなのですか?

安藤—— 研究テーマは、「ベトナムの伝統建築における温熱環境の評価」です。私の研究対象地でもあるベトナム中部の山奥のとある集落では、茅葺屋根を用いた伝統的な住居が発達してきました。そこに住まう原住民の方々がより快適な空間を過ごせるような室内の温熱環境を実するのがこの研究の目的です。実際に改修工事の提案もして、その後住居の室内の温熱環境やその快適性がどう変わったか現地で調査もしました。

研究で訪れたベトナムの住居

—— ベトナムの建築の研究をしていらしたんですね。今のところテーマパーク開発・運営というお仕事からどんどん離れているような気もします(笑)。研究内容は、選ばれた就職先とどう関係がありますか?

安藤—— 直接的にはあまり関係がないように見えるかもしれませんね(笑) 。テーマパーク開発・運営の本質はゲストを1番身近に考えて喜ばせることにあると思っています。僕の研究内容でも、例えば住民の方の快適性を考えて行った改修工事の後に、直接ベトナムの現地の方にありがとうと言われ喜んでもらえることがありました。これは僕にとっても非常にうれしかったですね。使う人の快適性を考え、改善し、笑顔を作っていくということには共通点はあると思っています。

—— 就職してからはどのようなことをしていきたいですか?

安藤—— 3年くらいはテーマパークのキャストをすることになっています。その後はゲストがテーマパークに何を求めているかを分析し、テーマパークの魅力を的確に発信するマーケティングに関わる部署にいけたらいいですね。僕は愛知出身で近くに大きなテーマパークがなく、いきたくてもいけないことがありました。そんな人たちにもテーマパークの魅力を伝え、足を運んでもらえるような環境を作っていけたらいいなと思っています。

—— なるほど。安藤さんがキャストしてるうちにお会いしに行きますね(笑)

趣味が進路の指針に KYOTO STYLE

—— 安藤さんは建築学科での学業以外にもいろいろな活動をされていらっしゃるようですが、具体的にはどのような活動をされていたんですか。

安藤—— 大学での研究とは別に、就職支援団体や、Instagramを活用した京都の観光情報発信サービス「KYOTO STYLE」の運営をしています。そのほかにもテニスサークルの会長をしたり語学留学に行ったりしていました。

—— さまざまな活動をされていますね。KYOTO STYLEは僕もフォローしています(笑)

安藤—— ありがとうございます(笑)

多数のフォロワーを抱える「KYOTO STYLE」

—— KYOTO STYLEはどのようなきっかけではじめられたのですか。

安藤—— きっかけは友人に声をかけてもらったことです。元々カメラが趣味で、個人で京都の写真を撮って自分のInstagramにアップしていました。そんな中、地元の友人たちが京都に来るときにどこにいいのか聞かれることがあり、自分の知っているおいしいお店やおすすめ情報なんかを写真つきで教えてあげるととても喜ばれました。こうしたことから、きちんとしたブランドで発信したらより多くの人に価値のある情報を発信できるのではないかと思い友人の誘いに乗りました。

—— KYOTO STYLEでは今後どのような活動をしていこうと考えていますか?

安藤—— 現在KYOTO STYLEのフォロワー数は11.9万人*に達し、OSAKA STYLE、TOKYO STYLE、NAGOYA STYLEを展開しています。今後は神戸や福岡など大都市圏に進出してブランドを確立しつつ、これからも継続させるためにさらなる収益化を図れればと思っています。

*2018年6月時点。2018年11月現在さらに増えて15万人に達し、FUKUOKA STYLE、KOBE STYLEも展開している。

—— KYOTO STYLEでの活動は自身にどんな影響を与えましたか?

安藤—— なにかに取り組むときに、目的を設定する・課題を把握する、課題の原因をつかむ、解決策を考える、解決策を実行する、この一連の流れから学びを得る、といった考え方のフレームワークを身につけられたと思っています。また、KYOTO STYLEでの活動も人を喜ばせるという意味では就職先での活動にも通じるのかなと思っています。自分の視野を広げるきっかけにもなったと思うので、進路に悩む学部生はこうした学外での活動に取り組んでみるといいかもしれませんね。

建築学科で自分を活かせる

—— 京都大学の建築学科のいいところを教えてください。

安藤—— 京都大学の建築学科では、製図室と呼ばれる、1回生から課題をやるための専用の部屋をもらえます。これは他の大学の建築学科にはない魅力だと思います。製図室で同期の学生と課題をこなしていくと自然ととても仲良くなります。高校の部室のような雰囲気に近いかもしれません。こうして仲のいい友人が増えていくのがいいところだと思います。

—— 最後に進路に悩む高校生の方に一言お願いします。

安藤—— 建築学科の中でもいろんな研究のフィールドがあるので、自分の強みや好きなことの活かし方はどっかに絶対あります。今興味がなくても建築学科に入ってから気づける面白ポイントはいっぱいあるので、建築学科に期待して入ってくれたらいいなと思います。

—— ありがとうございました。

(インタビュー:2018年6月14日 桂キャンパスにて)

登場人物

安藤 奨馬 | M2

1993年愛知県西尾市生まれ。小学校時代は野球クラブに入りながらドッヂボールの市内MVPになるなどアクティブな子供時代をすごす。愛知県立刈谷高校を卒業した後、2013年京都大学建築学科に入学。在学しながらInstagramで京都の情報発信サービス「KYOTO STYLE」や就職支援サービスなどを手がける。2017年京都大学大学院に進学。小椋研究室に所属し「ベトナムの伝統建築の温熱環境の評価」をテーマに研究に取り組む。来春からオリエンタルランド就職予定。趣味はロードバイク。京都から東京までロードバイクで行ったこともある。

この記事の研究室

小椋・伊庭研究室

人の暮らしと文化を守るため、建築に関わる熱湿気問題を解く。