歴史ある関西合同卒業設計展 Diploma × KYOTO その学生主体運営の裏側とは。

例年、卒業設計に取り組む京大建築学生の多くが外部の卒業設計展に出展します。その中でも,出展する学生が主体となって会を運営し、また京大生の出展率の高い”Diploma × KYOTO”を元運営側の目線から紹介します。

学外の卒業設計展とは

卒業設計は、講評会や表彰など、大学内でも評価される場はありますが、様々な視点を持った先生方に講評してもらいたい、他大学の人の作品と勝負がしたい、自分の作品と考えをもっと広く発信したいなどの理由で外部の卒業設計展に出展する人も多いです。

有名なものとして、せんだいデザインリーグ、福岡デザインレビュー、赤レンガ卒業設計展などが挙げられますが、今回は京大建築学生が多く出展し、また私自身が運営にも携わった”Diploma × KYOTO”について紹介したいと思います。

関西を代表する卒業設計展”Diploma × KYOTO”

Diploma × KYOTOは2019年2月の開催で28回目となる歴史のある卒業設計展です。例年2月末にみやこめっせの大きな会場で3日間にわたって開催され、昨年度は審査員の先生を15人お招きし、関西22大学、150人以上が出展しました。

【2018年度参加校:京都大学・京都建築専門学校・京都工芸繊維大学・京都女子大学・京都精華大学・京都造形芸術大学・京都橘大学・京都府立大学・大阪大学・大阪芸術大学・大阪工業大学・大阪市立大学・関西大学・近畿大学・摂南大学・関西学院大学・神戸大学・神戸芸術工科大学・武庫川女子大学・滋賀県立大学・立命館大学・奈良女子大学】

Diploma × KYOTOの一番の特徴は、出展者全員で運営をする、ということです。自分の出展する展覧会を自分自身で作り上げていくという意味では、苦労する面も、やりがいがある面も同じぐらいたくさんあります。

Diploma × KYOTO運営苦労話

Diploma × KYOTOは1カ月に1回全員が集まる会議があり、夏前から約9か月間、2月の開催に向けてほとんど0の状態から意見を出しながら準備していきます。

出展者全員で集まる会議の様子。ポスター等のメインビジュアルを投票で選定

出展者は全員何かしらの班に所属することになります。昨年度は代表、企画班、書籍班、スポンサー班、制作班、ゲスト班、広報班、会場班に分かれていました。例えば制作班だと、ポスターや会場に置くモニュメントのデザインなど、またゲスト班だと審査員の先生方に来ていただけないか交渉したり、当日にお付きをするなど、班ごとに多くの仕事があり、全員が運営を担っていきます。

次に資金面です。多くの人に見てもらうために大きな会場で開催したい、東京にいる有名な建築家を審査員として呼びたい、など、運営にはお金が必要です。出展者は出展料を払った上で、さらに展覧会のスポンサーを自ら獲得しなければなりません。学校の近くのお店や画材屋、知り合いの建築事務所など片っ端から電話をかけたり、直接出向いて交渉します。

そして、当日も会場の設営や展示、マイクのセッティング、片付けまですべて自分たちで行います。だだっ広い会場なので、パネルを貼る壁まで段ボールを貼り合わせて作ります。撤収や講評会で時間がオーバーしてしまうと、会場の費用が追加で必要になる…など様々な困難を協力して乗り越えながら卒業設計展をやりきります。

Diploma x KYOTO ’18の講評会の様子。中央に審査員。(撮影:瀧本加奈子)

また、これらの運営に関わる仕事を、自分の卒業設計と並行して取り組んでいかなければならないのが苦労する点です。開催当日も仕事で走り回っていて、先生方の講評をゆっくり聞けなかった!という人も少なくありません。

でもやっぱりやってよかったDiploma × KYOTO

ここまで散々苦労話を書き連ねてきましたが、それでも私はDiploma × KYOTOに出展してよかったと思っています。

毎年、展覧会のテーマを決めるところから始まり、審査員にどのような人を呼びたいか、どんな企画をするかなど、すべてを会議での議論で決定していきます。例えば昨年度だと、最前線で活躍する建築家の方、多方面の表現者の方、過去のDiploma × KYOTOの参加者の方、というテーマで審査員の先生をお呼びしたり、審査員の方や出展者が自由に展示を見て回り、その場でディスカッションをする「ゲリラ的講評会」などの企画を考えました。

他にも、会場をどこに、何日間開催するか、どのように会を進めれば出展者にとっても来場者にとっても有意義で面白い会になるか、など前年の企画にとらわれず決めていくことができるので、これまで自分たちが建築について学び、考えてきたこと、問題意識などを反映できるかもしれない、無限の可能性のある会となっています。

また、会議や班での活動を通して他大学の建築学生と仲良くなるとともに、色んな考えを持った人と話すことで自分の視野が広がると思います。出展者ならだれでも参加できる懇親会では、審査員の建築家の方とも話すことができ、審査員の先生方との距離も近いと言えるのではないでしょうか。

会議にてメインビジュアルのポスターを持ち、記念撮影。

今回紹介したDiploma × KYOTOだけではなく、卒業設計展は建築学生の4年間の集大成の場となっており、思いの込められたものとなっていると思いますので、建築学生はもちろん、建築に少しでも興味がある、という方はぜひ2月末のDiploma × KYOTOや、その他お近くの卒業設計展に行ってみてはいかがでしょうか。

Diploma×KYOTO’19 オフィシャルサイト