二度の震度7に見舞われた熊本県
地震環境工学分野のメンバー(教員1、修士4、学部2、防災研究所研究員1、防災研究所研究生1)は、2017年10月23日(月)に防災研究所の地震・火山研究グループが開催した、2016年熊本地震による被害地域の見学会に参加しました。
2016年の熊本地震とは4月の14日と16日の二度にわたって震度7の揺れを観測した地震を含む一連の地震活動を指します。この地震により、阿蘇大橋が崩壊したり、一部の町村で多くの木造家屋が倒壊したりと、甚大な被害が出ました。
断層の断面を間近で見られるトレンチ調査地点
私たちはまず、東海大学のキャンパスやその周辺で甚大な被害があった南阿蘇村での地表地震断層におけるトレンチ調査地点を見学しました。トレンチ調査とは活断層による地層の食い違いが観測出来ると思われる地点において、深さ数メートルほどの溝を掘り、その壁面に見られる地層および地層の食い違い(断層)の観察を行うことです。今回の南阿蘇村でのトレンチでは2016年の地震の痕跡のほか、さらに昔に生じたと思われる段差が見られ、過去にも同じ場所で断層が地表まで表れていた可能性があることを見ることが出来ました。
各所に見られる地震の痕跡
次に私たちは、地滑りにより大きな被害を受けた京都大学火山研究センターに向かいました。火山研究センターへのアクセス道が地滑りにより使用不可となっているため、道なき道を歩きました。地面や壁にひび割れの被害の出ている火山センターの建物の中も見学することができ、建物被害のリアルな様子を目の当たりにしました。
その後、熊本県上益城郡益城町堂園では、地表に表れた断層を見学しました。地震から一年半が経っているので少し見えにくいかもしれませんが、写真の畑のあぜ道のズレから地震によってどれだけの地面のズレが起こったのかを知ることができます。
その後は震度7を観測した益城町役場およびその周辺を歩いて見学しました。
地震発生から二週間後に訪れたときと比べて
私たちは以前、現地の被害調査と益城町の地下構造を探るための観測を兼ねて、熊本地震が発生して二週間後に現地に足を運んでいました。その時は地震発生から間もない頃であったため、倒壊した家屋があちこちに見受けられたり、避難所生活を余儀なく送っている人がたくさんいる状態でした。私にとって被災地で実際の被害を目の当たりにしたり、被災者からお話を聞く経験は初めてだったのでとても衝撃的だったことは記憶に鮮明です。今回見学会で震災から約一年半たった益城町を見学して感じたことは、復興はあまり進んでいないということです。いまだに倒壊した家屋のがれきが残っていたり、ブルーシートがかぶせられているだけで放置されていたりと、とても復興が進んでいるといえる状況ではないと個人的に痛感しました。なるべく早く元の姿に戻るために、国民や行政が一体となって復興支援を行っていくべきであることはもちろん、今後も必ず全国で発生しうる地震被害の軽減に向けて、私たちの現在行っているような地震防災の研究の重要性を再認識する機会となりました。